☆☆☆気軽に読もう日本語文学!!数分で読み切れる短編小説編 梶井基次郎 宮沢賢治など (3)☆☆☆
(こんな記事を書いてから半月が経過してしまったRYANA。「日本語文学編もやります」などと言いながら、日本語文学の知識はない。勉強しようにも金槌で釘を打つトカトントンという音が聞こえてきて、やる気が出ない。でも西洋文学だけを紹介するのはポリシーに反するというめんどうくさい性格のRYANA。そんなこんなで少し詳しい人にお話しを聞きに行こうということを思い立つ。)
(ということで今回はダイアログ形式で、簡単に読める日本の短編や詩を紹介しちゃいます。)
(やる気が・・・)
『簡単に読める日本ガイドダイアログ』
一号「日本語文学のおすすめ?」
RY「うん」
一号『源氏物語』
(日本語文学の最高傑作ってやっぱ『源氏物語』じゃないですかね。というか世界的に見ても最高峰と言っても差し支えないレベルでしょう。ただ長いし難解・・・)
RY「なるべく短いやつで。」
一号「じゃあ『土佐日記』」
RY「土佐日記ってなんだっけ?なんか聞いたことある気がする。」
一号「「男もすなる日記というものを女もしてみむとてするなり」紀貫之が女のふりをして書いた紀行文。知らないの?」
RY「なんだそりゃ」
(全55日に渡る、土佐から京までの紀行を一日一日と語る。女性だと言いながらおやじ臭さがぬけていないのが面白いポイントだ。)
一号「当時紀行日記は男性が漢文でかくものだったし、どちらかというと記録として残す役割が強かったみたい。それを女性が使うかな文字で書いた作品。紀行文って言うけど、フィクションもかなり混ざってるから、小説としてよむこともできるよ。」
RY「『土佐日記』ねえ。平安時代にもなりすましおじさんなんかいたんだな。現代でもバ美肉とか言ってるやつらいるし、昔からそんな願望が強いのかも。私にはいまいちわからんのだけど。私も美少女に扮して日記でも書こうかな。」
一号「なにそのきもい感想。貫之の場合は確かにネタとしての一面もあるけれど、当時主流だったきっちりとした記録じゃなくて、心に寄り添った所に意味があるの。」
RY「じゃあ私も美少女になりたい男性の心に寄り添えばいいってことか。」
一号「そういう意味じゃないんだけど・・・」
(平安時代の日記って貴族なのに俗っぽいよね。)
RY「『土佐日記』みたいな古典もいいんだけど、やっぱ古文読むのはきついし、新しいのはないの?」
一号「新しいって近代文学ってこと?」
RY「そうそうほら夏目漱石とか芥川とか太宰とかの時代」
一号「明治時代から昭和初期くらいってことね。」
(これも短い。漱石って基本実験的だよね。)
RY「なるべく短いやつでお願い。あとタダで読めるとなおいいな。」
一号「どんなのが好きかにもよるなあ。なんかよんだことある作品ないの?」
RY「「羅生門」くらいかな。『山月記』も授業で読んだかも。あんま覚えていないけど。」
一号「じゃあ芥川とか読んでみたら。『歯車』とか。」
(思いつめすぎだよ芥川)
RY「確かに芥川はいいな。ゴーゴリ好きだし。ただメジャーすぎるかも」
一号「はあ?」
RY「メジャーすぎたら紹介しても意味ないし・・・とりあえず短くて読んでいたら自慢できるようなやつ教えてくれ。」
一号「程度の低いやつ。でももしかしたらあんたがいつも読んでるような海外文学より短い作品が多いかも。結構有名なやつでも50P以内で読めるのも多いよ、日本語文学は。これなんかどう?『桜の樹の下には』」
RY「梶井基次郎か。有名なのコレ?」
一号「知らないの?めっちゃ有名だよ。聞いたことない?「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」って。」
RY「あ、それ聞いたことあるぞ、千夜ちゃんが言ってた。」
一号「千夜ちゃん?」
RY「知らないの?『ごちうさ』の。めっちゃ有名だよ。」
一号「ふーん(無関心)そうなんだ。」
(ラッキーアイテムは罪と罰らしい。)
RY「確かになんか力強い文だね。」
一号「桜の美しさと屍の腐った臭いのコントラストがいいんだよね。・・・」
RY「お前やっぱり悪趣味だな。」
一号「なにか言った?ああそうだ。梶井基次郎なら『檸檬』とかも有名だよ。」
RY「『檸檬』も短い。たった10Pならすぐ読めるな。」
一号「これ読んだからって、書店にレモンおいてくるとかやめてよね。あんたすぐ影響されるんだから。」
RY「お前は私をなんだと思ってるんだか。」
(御茶ノ水の聖橋に行くとこの曲を思い出す。なげちゃだめだよ)
一号「腐った屍で思い出したけど、腐った臭いが好きならやっぱ外せないのは乱歩。」
RY「いや別に好きだなんて一言も言ってないんだが・・・」
一号「乱歩だと『人間椅子』もいいけど、やっぱ『芋虫』だよね。」
RY「『人間椅子』、『芋虫』・・・ああelfの伊頭家三部作の『鬼作』のEDか。」
一号「何言ってんの?どうせまたキモいこと言ってんだろうけど。」
RY「まったく心外な。伊頭家三部作は名作だし...確かにキモいな。で『芋虫』ってどんな話なの?」
一号「戦争で重体になって、芋虫みたいになって帰ってきた夫とその妻の話。」
RY「え?」
一号「しかもそんな状態の夫を妻はいじめるの」
RY「あっはい。」
一号「両手足も、聴覚も味覚も失ってるし、声も出ないんだけど、目だけは生きていて・・・」
RY「やっぱお前も大概だな」
RY「なんかもっとすっきりした作品はないのか?胃もたれのしそうな作品ばっかじゃん。」
一号「うーん。RYANAなんかに勧めるってなると、そんなやつばっかり選んじゃうんだよね。そうだぴったりのがあったよ。田山花袋の『少女病』」
(『末期』のほうはいつ出るんだろうね)
RY「田山花袋?あんま聞いたことない作家かも。」
一号「え~?そうなのかなあ。でもきっと気に入るよ。」
RY「22pと短いし、読みやすそうだけど。どんな内容なんだ?」
一号「電車で見かけた女学生についてのしがない中年の想いをつらつらと書き綴った話。」
RY「・・・」
一号「たまに今だときもいおっさんだって言う人いるけど、当時でもキモかったんじゃないかな。」
RY「すっきりとした作品なのかこれ?」
一号「わたしはすっきりしたよ。最後のシーン読んで。」
RY「あんま期待しないで読んでみるよ。」
一号「なんでそんなこと言うかな。せっかくぴったりの作品教えてあげたのに。」
RY「お前・・・」
一号「そうだ。田山花袋といえば、国木田独歩とか・・『武蔵野』は短いよ。あと柳田国男だよやっぱ。」
(わたしは東京人だけど、こんな武蔵野はしらない・・・渋谷に林なんかないよ今。あるのは明治神宮と代々木公園だけ。でもツルゲーネフのから着想を得て武蔵野の自然を描写するのって面白いよね。)
RY「柳田は知ってるよ。たしか民俗学だかの学者でしょ。」
(妹は妹ではない)
一号「そうそう。彼の出世作の『遠野物語』なんかは文学と言ってもいいんじゃない?」
RY「『遠野物語』か。座敷わらしとか河童とかのあれね。」
一号「あれも70Pくらいで短いよ。文体は独特だけどそれもいい感じ。120の民話がそれぞれ短くまとまってるから、読みたいやつだけ読むのもあり。そしたら数秒で読めるよ。」
RY「民話か。グリム童話みたいなもんなのかな。」
一号「似てるけど、こっちのほうが驚きと恐怖に満ちてるかも」
RY「驚き?恐怖?」
一号「なんていうか、不気味で、でもだからこそ心惹かれるというか。もしかすると江戸時代の東北の貧しい農村部の事情が関わっているのかも。例えば河童の話なんてね。遠野の河童ってなぜか顔が赤いの。これは昔口減らしのために、間引いた子供を川に流して、それを河童だって言っていたという説があるんだって。」
RY「じゃあ今私たちが読んで不気味なのはそんな死の雰囲気を感じるからなのかもな。」
一号「そうそう。『遠野物語』って死についてのエピソードがたくさんあって、どれも独特だけど、なにか心の奥底に響くものがあるから今でも驚きや恐怖を持って読むことができるのかもね。だからわたしは大好き。」
RY「・・・」
(文語なのでちょっと読みづらいので一応口語訳も。でも口語だと間延びしちゃうんですよね。)
RY「あの・・やっぱもっとさわやかなのはないんですか・・・さっきから重々しいというかグロテスクというか」
一号「さわやか?『少女病』以外で?うーん・・・わたしそういうの好きじゃないからあんま知らない」
RY「やっぱ性格がねじ曲がっているんだね」
一号「失礼だなあ。」
RY「やっぱりさわやかに終われるやつが読みたいな。きっと今の時代そう言うのが求められているわけだし。」
一号「じゃあ宮沢賢治とか。」
RY「賢治?『よだかの星』ってなんか重かったような。」
一号「確かに悲しさもあるけど童話だし・・・わたしは『洞熊学校を卒業した三人』とかが好きなんだけど・・・」
RY「その表情。なんか嫌な予感がするからそれ以外にしてくれないか?」
(小学生のころ、図書室にあって、あんまりにも衝撃的な内容が話題になりました。)
一号「え?なんでわかったの!?じゃあいいよしょうがないな。『やまなし』なんかは短いしいいんじゃない?」
RY「『やまなし』?賢治って山梨県出身だっけ?」
一号「岩手県。常識でしょ。「クラムボンはわらったよ。」くらい知ってるでしょ。」
RY「クラムボン?それバンドじゃないの?」
一号「賢治だよ!」
RY「クラムボンってやまなしに出てくるのか。」
一号「そうだよ!」
RY「えっと、キャラクター名?」
一号「違うけど。」
RY「じゃあなんなのクラムボンって?」
一号「・・・」
一号「童話だから簡単だろうだなんて思ってるかもしれないけど、結構難しいの賢治は!よくわからない作家ランキングで日本文学界でもかなり上位に来るくらい難解だよ。造語が多くて、何言ってんだこいつってなることもしばしば。でもそんな文章のリズムと音感を楽しむのが賢治の楽しみ方なのかも。」
RY「じゃあ音読したりした方がいいのかな。ちょっとめんどくさいけど。」
一号「何言ってんの。賢治は詩人でもあるんだから、音としての日本語も大事にしてるに決まってるじゃん。『雨ニモマケズ』とか黙読じゃ魅力半減だよ。」
RY「まあ確かにソネットもエレギーも音読するもんだもんな。それにしても『雨ニモマケズ』ってすごい詩だな。そういう人を目指すだけですごいわ。まあ私は「サウイフモノニ ワタシハナレヌ」って方が共感できるけど。」
一号「やっぱあんたって・・・でもそういう詩が読みたいなら日本語詩も結構楽しめるかもね。じゃあ今度は詩もいくつか見てみようか。」
(『銀河鉄道の夜』はバージョンが沢山あり、いろいろ違ったりするから読み比べると面白い。青空文庫のやつだと最後ブルカニロ博士が世界観の説明をしだすけど、いま出版されているものにはそんな人物は登場しない。)
(というわけで短編編は終わりです。次回は日本語詩編!また会いましょう。それではでは~)