Z世代の代表 作品紹介

一号とRYANAがZ世代ならではの視点でさまざまな作品を紹介します。

『うる星やつら入門。うる星って何から見ればいいのというひとに向けて』

おっはよ~うち、Z世代の代表、RYANAだっちゃ!!


www.youtube.com

 

本日から令和最新アニメ『うる星やつら』が放送開始します。

 

実は私は『うる星やつら』の大ファンなのです。

*1

 

うる星やつら』はアニメ史上で最も重要な作品の一つ。

「せっかくリメイクされるんだからオリジナルにも興味がでてきた」「この機会に履修したい」という人も多いのではないでしょうか。

 

 

しかし『うる星やつら』は結構長い。原作は34冊もあるし、アニメは195回もあり、そのうえ映画6本にOVA・・・

 

 

めちゃくちゃ長いです。

 

もちろん全部見るのが理想ですが、ハードルが高すぎますね。

ということで今回は『うる星やつら』入門ということで、原作、アニメから重要な話をピックアップしてみます。

 

前提知識

まずオリジナルの『うる星やつら』を楽しむ前に、前提知識から。

うる星やつら』と言えば、80年代の作品で、女好きの主人公あたるとトラ柄ビキニのラムちゃん

あたるが浮気をするとラムちゃんが怒って電撃を食らわせる!

というイメージがあるでしょう。

もちろんこれは正解です。

 

 

でも意外に知られていないのは原作とアニメの違い。

うる星やつら』って原作漫画とアニメでかなり毛色が違うんです。

 

原作は皆さんご存じの高橋留美子先生。そしてなんとアニメ版の最初の監督は『パトレイバー』シリーズや『攻殻機動隊』などで知られる世界的な監督である押井守監督です。

 

 

そして原作もアニメどちらも先進的な内容でインパクトを残し、その遺伝子は別々の形で現在に至るまで受け継がれることとなります。

 

(『瀬戸の花嫁』ぽい原作うる星)

ハルヒはアニメ『うる星』のパロディ、と言い切っていいくらい似ています。)

 

違いを説明するのは難しいですが、非常識だけど愛嬌のあるキャラクターたちによるピタゴラスイッチのようなテンポのよい展開、センスが良く上品で嫌味のないギャグ、そして時折挟まれる人情話、ラムとあたるの恋の駆け引きや心温まるシーンなどが原作の魅力だと言えるでしょう。

 

 

アニメ版はどうでしょうか。アニメ版は原作のエピソードを引き続きつつ、よりハチャメチャで破滅的な方向へ舵取りをしています。またアニオリキャラであるメガネという、早口で活動家のようにがなり立てる男がいい感じに下品で面白いです。

またナンセンスで前衛的なエピソードも数多く見受けられ、時には理解することが著しく困難ながらも、雰囲気や作中で行われる哲学的な思索が非常に奥深く押井節が効いていて見ているだけで賢くなった気分になれます。

押井監督が降板した後、OPEDが2クールごとに変わるというところは注目すべき点でしょう。それまでアニメはOPEDが変わるということはあまりなく、『うる星』が最初に導入したらしいです。うる星を見ればアニソン史のいい勉強になるでしょう。

 

 

*2

ざっくり説明するとこんな感じでしょうか。

 

原作の楽しみ方

 

まずは4巻まで読もう。

 

時間があるなら1巻から全部読んだ方がいいです。

しかし『うる星やつら』は大きな物語がある話ではありません。

もちろん登場人物は増えていきますが、『ドラえもん』でしずかちゃんがどのように登場したのかを知らなくても楽しめるように、キャラクターさえ覚えてしまえばどこから読んだり見たりしても基本的には大丈夫です。

とはいえいきなり中盤から読み始めると、ノリがわからないところもあると思います。

 

また、前提知識のところでアニメと原作でずいぶん違うと話ましたが、原作も連載時期によってずいぶん雰囲気が異なります。

最初期はラブコメ的な要素よりは、世界一不幸な男の周りで起こる少し不思議なギャグ漫画というもので、ラムちゃんももともとは1話限りのゲストヒロインで、本来のヒロインはしのぶというキャラクターでした。

ラムちゃんがいつメインヒロインになったのかということには論争がありますが、おそらく3巻の中盤「とらぶるは舞い降りた」という話からでしょう。

ここで主人公もあたるは1年生から2年生に進学し、ここからは2年生を永遠にループするサザエさん方式に変わります。

そして3巻末の「ツノる思いが地獄をまねく」や「君待てども」そして4巻終盤の「君去りし後」などのエピソードでラムちゃんがメインヒロインであることが押し出され、あたるの気持ちもほのめかされることとなります。ここらへんでラブコメうる星やつら』が確立したと考えられるでしょう。

 

というわけで私は原作を楽しむときは、原作4巻までは先に読むべきだと思います。

 

原作4巻までに多くのキャラクターは登場するのである程度ノリがわかってくると思います。

 

とはいえ重要キャラクターで4巻までに登場しないキャラもいるので、一応どの巻に登場するか、ここに明記しておきましょう。

 

7巻 ラムのいとこ テン 「テンちゃんがきた」にて

 

(表紙テンちゃん)

11巻 相撲取りのようなネコの幽霊 こたつねこ 「階段にねこがおんねん」にて

 

(表紙コタツネコ)

15巻 男装した美少女 藤波竜之介 「激闘、父子鷹‼」にて

 

(表紙竜之介)

 

その他にも準レギュラーはいますがメインはこんなところです。

 

私的おすすめエピソード 5巻以降

ブコメ・心温まる編

9巻「お見合いコワし」

ラムちゃんがお見合い!?あたるは居ても立っても居られずに宇宙に飛び出すというお話。

10巻「雨よ降れ降れ、もっと降れ!」

妖怪に呪われた女の子のお話。あたるの根性に泣ける。オチもめちゃくちゃ面白いです。

24巻「最後のデート」

あたるってやっぱりやさしいんだなってわかるお話。

30巻「ダーリンの本音」

『うる星』の醍醐味。あたるの本音は・・・

34巻「ボーイ・ミーツ・ガール」

「お見合いコワし」のスケールをでっかくしたバージョン。原作最終話ですね。

 

 

ドタバタ・SF編

11巻 「コピーdeデート」

ランちゃんの策略で無限に増え続けるあたるのお話。

12巻「命かけます、授業中‼」

話したら補修と言われ、何が起きても声を出さない登場人物たち。黙っているだけで、大惨事になる様は痛快です。

17巻 「みじめっ子・終太郎‼」

面堂のトラウマの根源は?タイムパラドックスを扱ったお話。

18巻 「無我の妙薬‼」

お色気回。

26巻 「愛の使者どすえ」

テンちゃんに子供?そして親は子に似る

27巻「反省座禅会」

「命かけます」とほとんど同じ。『うる星』の醍醐味はこういうテンポのいいギャグだと思うのです。

 

こんな感じです。厳選してピックアップしましたが、やっぱり全部読んだ方がいいと思います。

 

 

アニメの楽しみ方

原作からがオススメ。アニメからなら下に書いてあるエピソードを見よう!

 

アニメ『うる星』は前述の通り原作と全然違います。

しかしキャラクターは一応(微妙にノリが違いますが)原作とほぼ同じなので、原作を読んでいれば、どこから見ても楽しめるでしょう。

おすすめは原作からアニメに入る方ですね。

しかし一応アニメ単独での道しるべとして、どの話をみればよいのかということをまとめでおきましょう。

まずキャラの登場話から

 

第一回 あたる、ラムちゃん、しのぶ、チェリーなど

 

*3

第2回 テンちゃん

 

 

3回 レイ

 

 

5回 サクラ

 

 

8回 お雪

 

 

9回 クラマ

 

 

14回 面堂(実は11回にも登場している)

 

 

15回 弁天

 

 

18回 ランちゃん

 

 

51回 コタツネコ

 

 

63回 竜之介

 

 

とここまでが原作登場キャラですが、アニメには重要なアニオリキャララムちゃん親衛隊が登場します。

彼らの活躍こそがアニメ『うる星』の根幹であるので、彼らが活躍する回も紹介しましょう。

 

10回 「ときめきの聖夜」

メガネの独白そのⅠ。原作と何が違うのかこの回を見ればなんとなく理解できます。

 

 

46回 「買い食いするものよっといで!」

 

 

もはや革命家なのではないかという演説シーンがあります。このエピソードは原作にもあるが、アニメ版は戦争映画のような味付けがされていて仰々しいです。

 

アニメオススメエピソード

『うる星』はラブコメです。しかしラブコメエピソードだけでなく、ハチャメチャでなんでもありな世界観が『うる星』の最大の魅力だと私は認識しています。

特にアニメは、映画からの引用やつげ義春など前衛的な作家のパロディなど、一言で言うとカオス。

というわけでそんなアニメ『うる星』の良さを最大限楽しめるエピソードを紹介します。また原作を読了した方に向けて、原作と大きく異なったり、アニオリエピソードもまとめておきましょう。

 

37回 「怪人赤マントあらわる!」

大きな流れは原作と同じ。しかしダンスシーンで「星空のサイクリング」が流れる。

 

42回 「酔っ払いブギ」

原作と流れは同じだが、酔っぱらったラムちゃんのシーンで「マルガリータ」が流れる。ラムちゃん視点の映像が表現主義映画見たいで面白い。

 

53回「決死の亜空間アルバイト」

後半はお色気。しかし前半は『ねじ式』のパロディで、語義通りシュールレアリスム的な描写が続く。あまりにナンセンスでわけがわからないが、『千と千尋の神隠し』の元ネタ(要出典)と言われることもあり、とても見ごたえがあります。

 

64回「さよならの季節」

これも筋は原作と同じですが、原作と異なり、「あたるの引退」によって友引町のパワーバランスが崩れることを危惧したキャラクターたちが陰謀を巡らせるという展開が追加されています。

 

72回「ラムちゃんの理由なき反抗」

後半は原作と同じ。しかし前半部分ではキャラたちが自主映画製作をするという内容になっています。映画のパロディが多いです。

 

75回「そして誰もいなくなったちゃ⁉」

アガサ・クリスティーのパロディ。キャラが死亡する衝撃作。

 

78回「みじめ!愛とさすらいの母⁉」

もっとも前衛的な回。「胡蝶の夢」を題材にしたアニメや漫画は今でこそ沢山あるけれど、当時としては革新的だったのかもしれない。途中のあたるの母の精神分析をするシーンが好き。

 

84回「恐怖!トロロが攻めてくる‼」

ホラー映画のパロディ。ヒッチコックの鳥のようだが、『キラートマト』のパロディだと思うのは私だけだろうか。

 

91回「ドキュメント・ミス友引は誰だ⁉」

原作と全く異なる。原作は普通にミスコンをする話だけれど、こちらはミスコンを巡った政治劇が展開されます。賄賂やらスポンサーやらやたらとリアルな展開の結末は自身で見て確かめましょう。

竜之介の顔を踏み絵するシーンがあり、原作者の怒りを勝ったと噂されている。(要出典)

 

99回「必殺!立ち食いウォーズ‼」

押井でしかない回。立ち食いのプロの美学は必見です。

 

100回「大金庫!決死のサバイバル‼」

ラムが登場しない珍しい回。あたると面堂の二人だけで物語は進みます。

 

105・106回「スクランブル!ラムを奪還せよ‼」「死闘!あたるVS面堂軍団‼」

押井監督が手掛けた最後のエピソード。ミリタリー×『うる星』というアニメの特色が最も押し出されたエピソードですね。

 

107回「異次元空間 ダーリンはどこだっちゃ⁉」

やまざき時代の最初のエピソード。パラレルワールドのお話。

 

118回「堂々完成!これがラムちゃんの青春映画」

映画製作エピソードその2。こちらは映画の資金繰りに焦点が当たっていて、いかにスポンサーが口を出すことによって映画がめちゃくちゃになっていくかというアニメ『うる星』らしいエピソードです。

 

151回「退屈シンドローム!友引町はいずこへ!?」

押井パロディみたいなエピソード。かなり批評性がつよい冒頭から、ハチャメチャな後半まで『うる星』後期の中でも屈指のエピソードだ。

 

194回 オールスター大宴会!うちらは不滅だっちゃ‼」

アニメ最終話。ハチャメチャに終わる。

 

こんな感じですかね。

名エピソードは押井時代の後半にまとまってます。

とはいえ原作に近いエピソードでも素晴らしい回は沢山あって、「君去りし後」とか「最後のデート」とかはアニメ版も素晴らしいですよ。

 

映画・OVAについて

おそらく『うる星やつら』に関心があるという人の中には、映画に興味があるという人もいるのではないでしょうか。

『うる星』の映画、特に『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』はアニメ史どころか映画史に残る名作ですし、その他の映画も興味深いものが多いです。

映画に関しても、基本的にはキャラを覚えていれば見ることができるので、前述のエピソードさえ見ていれば大丈夫です。

やはり『うる星2』はみておいた方がいい作品ですよ。特に00年代以降のオタク文化に触れてきた人なら、これが原点なのかという遺跡を見たときのような感動が待っているはずです。

 

他の『うる星やつら オンリー・ユー』は最終話や『うる星5』である「ボーイ・ミーツ・ガール」と対になっていて面白いですし、『うる星3』『うる星4』は『うる星2』を乗り越えようとする作品で、非常に多くの示唆を与えてくれます。

 

 

(『消失』って実質『うる星3』)

 

(難解だけど、よく考えれば内容が見えてくるはず。作画はめちゃくちゃいい。)

『いつだってマイダーリン』は・・・まあ時間があれば見てもいいと思います。

 

OVAは忍の恋路が気になる人は見ても損はないかと思います。基本的には原作の残りを消費する感じです。

 

 

以上が『うる星』入門編となります。基本的にはシリアスな作品でもないので、あまり肩に力を入れずにリラックスしてみることをお勧めします。

そんな中で「あっこのキャラいいな」だとか、「友引町で楽しく暮らしたいなあ」だとか感じることができれば、あなたは『うる星』玄人。

リメイク版だけ見るのもいいですが、ぜひオリジナルを堪能してみてください。

 

それでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:(ここで問題になるのが、どっちのうる星が好きなのかということですが、わたしは原作もアニメもどちらも好きなのです。というよりも高橋留美子の作ったテンポの良いおしゃれな原作と下品で騒がしい押井守やまざきかずおの微妙な対立関係こそが『うる星やつら』という作品を奥深いものにしていると考えています。そもそも最終章の「ボーイミーツガール」は「ビューティフルドリーマー」で行われた原作への反逆を前提にして読むことで、かなり興味深く読むことができます。「いまわの際に言ってやる」の精神は『らんま1/2』、冒頭から物語を終わらせた『人魚シリーズ』や『犬夜叉』の奈落の頻繁な逃亡や生き返った桔梗など高橋留美子の哲学を最も凝縮したセリフなのです。)

*2:押井監督が105話で降板した後、グンと作画のレベルが向上し、各アニメーターがそれぞれのラムのデザインを確立させていきます。どのアニメーターが作画監督かを当てるという楽しみ方も面白いです。

*3:アニメ『うる星やつら』は話数と回数が異なるので注意。