Z世代の代表 作品紹介

一号とRYANAがZ世代ならではの視点でさまざまな作品を紹介します。

『うる星やつらと平成 うる星の遺伝子は受け継がれた。』

 

うる星やつら』ほどモダンな作品はあるのだろうか。

 

 

もちろん影響力だとか、オリジナリティなんてものは数値化することができないので、結局は主観に頼らざるを得ない。

世間では現代のオタク文化エヴァ以後だなんて批評がされるけれど、私にはどうしてもそうは思えない。

 

 

 

(とはいえガイナックス的な同人と公式の境目があいまいな商売方法は大きなインパクトがあったと思える。『エヴァンゲリオン』は本編の内容よりも消費のされ方が画期的だったのだとわたしは考えている。しかし内容面でならばエヴァよりインパクトを与えた作品は他にも沢山あるのではないだろうか。)

 

どう考えても内容的にはうる星以前以後と言った方が適切だろうと考えるのだけれど、この考え方はおかしいのだろうか。

殊更に90年代後半から10年代前半までの主要なオタク作品の多くは、うる星やつらの遺伝子を受け継いでいるように思える。

もちろんこれらの作品がうる星に影響を受けているなんて起源論を主張したり、パクり認定してそれらの作品を貶したりはしない。

 

今回はうる星やつらが開拓したうる星ぽさ、つまりうる星の遺伝子を継ぐ作品をここで何作品か上げてみることによって、その遺伝子がいかに平成を象徴していたのかということを概観することを目的としたい。

 

うる星の遺伝子

 

それではうる星の遺伝子とは具体的にはどのようなものなのだろうか。

 

まずうる星の遺伝子その1として挙げられるのは、美少女キャラクター+日常系+ラブコメというものだろう。

ここでの日常系と言うのは、『ドラえもん』のような状態を想定している。

つまり、キャラクターたちになにか大きな目的があるわけではなく、日々過ごす中で起こる事件をドタバタコメディとして描写するというものだ。これに関してはそこまでうる星が革新的だったというわけではない。しかし当時はガンダムブームであり、青年が見るアニメと言うものは戦記物が主流だったし、『ドラえもん』もテレビ朝日で放送していない。少女向けではこういった作品はあったが、うる星は青年が見る日常系のパイオニアということができるだろう。

 

そして美少女。うる星やつらには様々な美少女が登場する。そしてそれぞれ宇宙人だったり雪女だったり、巫女だったり、保険医だったりする。幽霊という場合もあるし妖精だったりもする。こうしたバラエティー豊かな美少女が登場することはうる星の革新性の一つであり、最も影響を与えた部分である。

そしてそれらの要素をラブコメという軸でまとめ上げているのがうる星である。基本的にはラムちゃんとあたるの一連の流れ、つまりあたるが浮気をしてラムちゃんが電撃を放つというクリシェが延々と繰り返される。(もちろん本当はそんなわけではなく、あたるは他のヒロインにも殴られたりけられたりする。)

 

 

ここまでが原作うる星の遺伝子の基本的な要素である。この遺伝子だけでも受け継いだ作品はあまりに多いため、ここに記しきることはできない。

 

一応例を挙げてみるとこんなところだろうか。

 

 

 

 

 

(別にパクりと言っているわけではない。)

 

これだけでも相当なもんなのだが、うる星の遺伝子はこれだけではない。

アニメ版『うる星やつら』、特に映画『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』は原作と同じくらいの規模の影響をオタク文化界にもたらしたのだ。

 

 

それはどのようなものだったのか。細かいところを言い出したらキリがないので、大枠だけ記述しよう。

 

うる星の遺伝子その2は、作中世界をキャラクターの夢と表現したり、作品内でループさせたりすることで日常系のメタ構造を浮かび上がらせるというもの。

物語は虚構である。それは当然のことなのだが、遺伝子その1のような物語はあまりに都合が良すぎる。

そんな性格の悪い観点からうる星やつらという作品を解体、物語の虚構性を夢と看破し繰り返される日常をループという手法で表現した。メタフィクションといえば単純に物語の登場人物が漫画の枠外から突っ込みを入れたり、ゲームの登場人物が第4の壁を越えて話しかけきたりと言った、表面的なものもある。

しかし『うる星2』は作品構造を批判的に作中に取り込み、作中そのものに批評性を持たせることに成功した。

 

メタ構造、夢、ループという遺伝子もご存じの通り数多くの作品の中にみられる要素である。

例を挙げるとこんな感じだ。

 

 

(メタ構造という意味では最も進化させた作品)

(商店でメモを貼るシーンなど『うる星2』のパロディもある。しかしこの作品はバブル崩壊後の作品。文化祭前日なんて気分はもはやなく、合宿にて人間関係がバラバラになったところから始まるのだ。)

(言い逃れできないレベル。映画製作、無人島での殺人事件、しかもトリックまで同じ、そしてループ。『うる星3』では町の特異点としてラムちゃんを定義して、ラムちゃんが去ると超常的な現象はめっきり起こらなくなり、現実世界のようになるが、ハルヒも『うる星3』に近い世界観だ。)

(アニメ最終話のエンディングがね)

(喫茶店のシーンやバスのシーンは間違いなくパロディ。内容は前述のクロスチャンネルのほうが近い)

 

こうして挙げた作品を見ていくと、平成を代表する作品が目白押しだ。昭和まではオタク文化の主流はヤマト・ガンダムといった戦記物だった。

 

(『Zガンダム』ほんま面白い)

 

しかし徐々にうる星遺伝子を受け継いだ作品、つまり日常とメタフィクションを取り入れた作品が増えていき、00年代には主流となる。

 

令和に入ってからはオタク文化というものが王道少年バトル漫画との融合を果たしたり、メタ構造を必要としないなろう系のブームなどでうる星遺伝子を受け継いだ作品は目立たなくなったものの、いまだに子孫とも呼べる作品は数多く存在している。

 

令和最新アニメ『うる星やつら』が現在放送中であるし、令和にもうる星遺伝子は受け継がれていくのだろう。