Z世代の代表 作品紹介

一号とRYANAがZ世代ならではの視点でさまざまな作品を紹介します。

『W杯優勝したのでアルゼンチンの代表的サッカ、ボルヘスを読んでみた』

FIFAワールドカップ2022決勝、やべえ試合でした。


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前半メッシとディ・マリアが2点を先取。

2-0の危険なスコアとは言え、フランスはシュートすらなかなか打てないし、アルゼンチン勝利はもう確実と思っていたら、後半エムバペが2回もネットを揺らして延長戦へ。


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延長戦でもオフサイドギリギリの攻防でメッシが3点目を獲得。

これで決まったと思いきや、まさかのハンドでフランスはPK。

エムバペはこれでハットトリック

 

そしてPK戦に突入。

 

最後の最後まで気の抜けない展開でしたが、最終的にはアルゼンチンの勝利。

 

メッシは神になりました。


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そんな神メッシと神の子であるマラドーナを輩出したアルゼンチン。

実はそんな神サッカー選手だけでなく、神作家も生み出しているということをご存知でえしょうか。

 

今回はそんなアルゼンチンの大作家ボルヘスについての紹介です。

 

ホルヘ・ルイス・ボルヘスは1899年にアルゼンチンに生まれた作家です。

結構最近まで生きていて、1986年にスイスにて亡くなりました。

作風はというと、わたしもにわかなので何とも言えませんが、幻想的でそれでもどこか秩序だっている不思議な魅力のある作風です。

作品は『伝奇集』のような短編集、『幻獣辞典』のような百科事典風のもの、また詩やエッセイなど多岐にわたっています。

 

今回はアルゼンチン優勝記念に読んだ『伝奇集』を紹介したいとおもいます。

1944年に出版された短編集ですが、今読んでもあまり古さを感じることのない作品です。

「八岐の園」と称された8篇の「伝奇集」と10篇の「工匠集」から構成されています。

基本的にはそれぞれ独立した短編ではあるのですが、うっすらと繋がっているので、通読することをおすすめしたいです。

特に気に入ったのは「トレーン、ウクバール、オルビス、ティルティウス」「バベルの図書館」「八岐の園」「隠れた奇跡」。

解説できるほど、読み込んでいないのでなんとなくの概観を書いてみたいと思います。

 

「トレーン、ウクバール、オルビス、ティルティウス」

友人と議論していた時に聞いた聞き覚えのない場所、人物、文化。それがウクバールというものなのですが、友人はその出典が『アングロ・アメリカ百科事典』だと言う。

しかしウクバールという単語は探しても見当たらない。でっち上げかと思っていたら、項目はなかったけれど確かに記述は存在していたのです。

その記述はウクバールの文学の舞台である架空の土地トレーンについて、そしてそのトレーンという架空の概念が徐々に主人公のいる現実を侵食していくのです。

 

非常に興味深いお話でした。

架空の概念がいつの間にかまわりに偏在していて、最後には「世界はトレーンになるだろう」という展開。

恐ろしくもあるお話ですけれども、わたしはこのお話をコメディとして読んでしまいます。こんなバカげた、そして魅力的なおはなしはなかなかないでしょう。

なんかコントとかにしたら面白そうなお話です。

わたしも世界をトレーンしてみたいですね。

 

「バベルの図書館」

もしかするとボルヘスの短編の中でも最も有名な作品なのではないでしょうか。

六角形のすべての単語のパターンが保存された広大な図書館。

しかし人間がいくら努力してもそのすべてを把握することはできません。

なんとなくというか、確実にカフカの『城』の影響下にあるお話でしょう。

いますぐすべてを手に入れたいと願うお話はゲーテの『ファウスト』を典型として数多く語られてきましたが、20世紀になるとその不可能性にアンビバレントな希望を求めだします。それは自然科学の発達ゆえのことなのでしょうか。

 

「八岐の園」

「伝奇集」の最後に位置しているお話。

今となっては非常に普及した可能性世界についてのパイオニア的作品です。

あなたのご先祖は均一で絶対的な時間というものを信じてはいなかった。時間の無限の系列を、すなわち分岐し、収斂し、並行する時間のめまぐるしく拡散する網目を信じていたのです。たがいに接近し、分岐し、交錯する、あるいは永久にすれ違いで終わる時間のこの網は、あらゆる可能性をはらんでいます。

たぶんSFアニメを見ていたら100回くらいは聞く、2015年以降の作品でこんな凡庸な設定を引っ張り出して来たらあくびが出るような、だいたい似非量子力学とセットになっていそうなそんな語りですけれど、これが1941年の作品だということに驚かされます。

とはいえ可能性世界については、ムージルの可能性感覚など似たような発想は戦前からあるので、めちゃくちゃ革新的とは言えないかもです。

しかしながらSFアニメの設定みたいな語りを1941年時点で成し遂げているということは注目に値するでしょう。

 

「隠れた奇跡」

舞台はプラハ

死刑を宣告された作家フラディークは死への恐怖と戯曲『仇敵たち』が未完であるという心残りの胸に抱きながら死刑の時を待ちます。

そして死刑執行のその日、彼は夢の中で「そなたの仕事のための時間は許された」と告げられました。彼を貫く銃弾が発射された瞬間、物理的時間は停止して一年かけて戯曲を完成させます。そして完成した瞬間、銃弾が動き始め彼は撃ち抜かれるのです。

非常に美しい作品です。走馬灯だとか死の直前に様々なイメージが脳によぎるという発想はありますが、物理的時間が停止するという発想は非常に映画的で、その時の映像がありありと目の前に浮かんできます。

 

 

というわけでボルヘスの『伝奇集』でした。

わたしは南米文学というものに対して本当に無知で、実は今回初めて触れました。

マジックリアリズムと言うのでしょうか、サイエンスフィクションとファンタジーの中間のような魔術的で即物的な独特の世界観。

圧倒的な文献学的知識に裏打ちされた、虚構。

時折見せる南米の情熱的な雰囲気。

まだボルヘスしか読んだことありませんが、とても気に入りました。

こんな素晴らしい作品がこの世にあるだなんて、世界とはすばらしいものです。

ありがとう。世界

ありがとう。きっかけを作ってくれたワールドカップ

そしてありがとう。メッシ


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そんな感じです。W杯の決勝と同じくらいエキサイティングな読書体験でした。

南米のあの情熱的な雰囲気はアルゼンチン代表にも、本作にも共通する気も。

「結末」や「南部」という話を読むと、マルティネスのやんちゃもなんとなく南米精神として消化できる気もします。

イエローカードが14枚出るような試合はどうかと思うけど。)

次はガルシア・マルケスでも読んでみようかな。

それではまた会いましょう。

 

アディオス!!!!

 

gzdaihyoryana.hatenablog.com

(日本代表負けちゃったのめちゃくちゃ悔しい!!だけどクロアチア強かった。そしてモドリッチかっこよすぎだ。3位とかすごすぎ。次は日本もベスト4行って欲しいな)