『無料でできるヴィジュアルノベル(美少女ゲーム)!!『ドキドキ文芸部』だけじゃないよ!!』
『ドキドキ文芸部』以降世界的に普及したヴィジュアルノベル。
(YouTubeで3000万再生を超えている関連動画もちらほらある。すごい人気ですね。)
というわけで今回は国内外産問わず面白いヴィジュアルノベルを、しかも無料でできるものをいくつか紹介しよう。
そもそもヴィジュアルノベルとは?
ヴィジュアルノベルとは美少女ゲームのことである。
奈須きのこや虚淵玄、竜騎士07や田中ロミオ、丸戸史明などなどさまざまな名ライターを生み出し、現在でもライトノベルの分野や脚本家でもヴィジュアルノベル出身の人がちらほらいる。
日本の現代文化史において外せない存在で、特に00年代においては最も重要なアイデアの源泉でもある。
そしてイラストレーターの分野では最も人材を排出したメディアであることは間違いない。
(Vtuberのデザインもラノベのイラストもヴィジュアルノベル出身が多い。調べてみましょう。ちなみに直木賞を取った桜庭一樹も美少女ゲームに携わってたりするよ。日活にたとえられることもあるけど、おそらく日活よりも出身者が大成してる。)
※ヴィジュアルノベルはLeafというアダルトゲームブランドが作り出した和製英語だが、今や国際語として普及している。Wikiには38言語ものページがあり、いわゆる紙芝居のゲームだけでなく、『ときめきメモリアル』のようなシミュレーションゲームからRPG作品までアニメ的な美少女の登場するゲームすべてを指す用語となっている。
(最も成功したヴィジュアルノベルである『Fate』。本作も元々はアダルトゲームである。)
そんなヴィジュアルノベルだがコンシューマーゲームやスマホゲームと比べてハードルが高いのも事実。
私も最初はFANZAやDLsiteで買うのはすごく抵抗があり、プレイしたくてもプレイできない状況が数年続いていた。
(数年前までは「ふぇぇ…エッチなゲーム買うなんて恥ずかしいよぉぉ」って感じでした。今ではバンバン買ってますけど。)
また値段的な障壁も大きい。一度もその手のゲームをプレイしたことない人がいきなり『マブラブ』『マブラブオルタネイティブ』合わせて8000円と言われて購入するのはやはり抵抗がある。
(ヴィジュアルノベルならではの手法を取った大傑作。)
そうするとスマホやsteamでプレイできる無料のものなのであろうが、やはり玉石混合で質の低いものも多い。
そこで私は無料ながらシナリオやゲームとしてのクオリティの高いものをここで紹介しようと思う。
(基本的にシナリオ重視です。絵やUIのクオリティは微妙なやつが多いかもしれませんがご了承ください。まあタダなんでそこは気にしない方向で。)
“Doki Doki Literature Club!”
皆さんご存じの『ドキドキ文芸部』。
シナリオは短いがよくまとまっていて、絵に関してもクオリティが高い。声はないけれど、これが無料でできるというのは信じられないレベルだ。
内容は皆さんご存じの通りメタフィクションである。
第四の壁を破るというのはヴィジュアルノベルでは古典的な手法であり『ドキドキ』の構造も基本的には『臭作』や『君と彼女の恋。』『EVER17』など数多くの作品で行われてきたものを踏襲している。
メタフィクションの構造としてあまり目新しさはないものの、バグゲームとしての手法はヴィジュアルノベルとしては画期的。
プレイ時間も短いため気軽にできる。
そして日本語パッチもある。
初心者にはうってつけの作品だろう。
(SwitchやPS4にもある。)
『NOeSIS-嘘を吐いた記憶の物語-』
Windows向けのフリーゲーム。声が欲しければスマホ版のやつを買ってみよう。(私は買った)
ちなみにシリーズものだが3以降は有料である。
ヴィジュアルノベルのフリーゲームとしておそらく最大級のボリュームを誇る本作。
作中では哲学や文学、生理学などの用語が引用され衒学的な雰囲気が漂う。
(おそらくケロQや田中ロミオの影響。この作品からその手の作品に入るのが正解ルートかもしれない。)
内容は説明しにくい。
セカイ系、自殺、そしてヤンデレというキーワードに心が動くならやってみるといいかもしれない。
印象に残っているのはいつの間にかモブキャラが全員ロボットかゾンビであると気が付くシーンだ。
そうした退廃的でナルシシズムに溢れた雰囲気を味わいたいという人はぜひプレイしてみよう。
“narcissu“
ねこねこソフトのシナリオライターである片岡ともによる同人作品。
なのだが・・・実はまだ未プレイなので内容を紹介することができない。
声が付いている上にシナリオの評判がいい。無料ヴィジュアルノベルを紹介するという記事でこれを外すわけにはいかないので一応ここで名前を出しておこう。
Steamでできる。私も早くやらねばなるまい。
ここからアダルトゲームを扱います。苦手な方はブラウザバック。
“Katawa Shojo”
当時世界最大級の匿名掲示板だった4chan。日本のふたばチャンネルを元につくられた掲示板であるが、ハッカー集団アノニマスからQアノンまで独特の文化の源泉、もしくは元凶になっているインターネットの闇である。
そしてその4chanの有志が集まってFour Leaf Studios(おそらくLeafとよつばちゃんねるをかけているのだろう)を設立。
そして作られたエロゲーが”Katawa”だ。
かなり攻めた内容で、ヒロインが全員障碍者である。
(コンセプトアート)
あらすじはそうしたヒロインたちと主人公(心臓病)がお互いトラウマを乗り越えていくというものであるが、ヴィジュアルノベルのお約束でめちゃくちゃ重いルートがあったりする。
シナリオもCGのクオリティもかなり高く、なんとアニメーションまでついている。無料ゲームの中でも破格の品質だ。
(ちなみにこのゲームのイラストを担当しているraemzはいま『安達としまむら』のイラストを担当するなど、日本でも活躍している。)
日本語バージョンもあるのでプレイのハードルは低い。ぜひやってみよう。
(シナリオのクオリティは高いけど、ヴィジュアルノベル的と言うよりは映画やドラマっぽい。)
(このイラストの人。割と売れっ子らしい)
アリスソフトとは30年以上の歴史がある老舗のアダルトゲームメーカー。
アダルトゲーム界隈屈指のゲーム性、そして独特の世界間で最近でもプレイヤーに指示され続けている。
そしてアリスソフトは非常に良心的なブランドで、1996年より前に発売したゲームのデータを公式が無料で配布しているのだ。
(有志が作った「鬼畜王on Web」はクローム系のブラウザでアリスソフトアーカイブスの作品が動作するツールである。Windows10だと音が出なかったりするのでこっちでやった方がいい。ちなみにこれを使えばWindowsでなくても起動する。スマホでもできるよ)
いろいろなゲームがあるが、おすすめなのは闘神都市シリーズとランスシリーズだ。
『闘神都市Ⅱ』
ヴィジュアルノベルでは珍しいRPG作品である。
そして1994年につくられたということを考えるとグラフィックが非常によくできている。
ゲームシステムは難しすぎず、簡単すぎずといったところ。
そしてシナリオは文句なしに面白い。
ただ、闘神都市の設定は過激なので苦手な人は注意が必要かもしれない。
闘神大会という天下一武道会のようなものに出場するのだが、ルールがやはりアダルトゲーム。勝利した場合トーナメントで倒した相手、もしくはそのパートナーを好きにできるというルールなのだ。
また、ダンジョン内で出くわす女の子モンスターを奴隷として売り飛ばすことで金銭的に有利に進めることが可能になる。
しかしこれにも帳尻合わせのような要素があり、このような望まない行為を強要した場合悪事ポイントと言うものが貯まる。
これが貯まりすぎると終盤詰む仕様なのでよく考えてプレイしてみよう。
(3DSでリメイクしている。)
『鬼畜王ランス』
アリスソフトどころか全アダルトゲームの中でも最高傑作との呼び声も高い本作。
アリスソフト得意の地域制圧型シミュレーションというジャンルで、ひょんなことから王になった主人公が軍隊を用いてほかの国々を蹂躙しその国々の女の子をこますという内容だ。(『信長の野望』とアドベンチャーゲームを足した感じ)
本作が支持される理由としてあげられるのはゲーム部分の完成度がずば抜けているところだ。
ボリュームも満点、そして自由度も高いためやり込みがいがある。
難易度はかなり高いがシステムはシンプルなのですぐに覚えることができるだろう。
そしてあまり注目されていないが、シナリオの出来も全アダルトゲームの中でもトップクラスである。
このゲームの目的は世界征服であり、人間界、そして魔物界を制圧することであるが、それだけでは終わらない。
世界を制圧した後に明らかになる世界の謎、そして理不尽なまでに強力な敵。
00年代のセカイ系やアダルトゲームの主な主題として『デビルマン』的な終末と『ビューティフルドリーマー』的なメタフィクションというものがあるだろうが、それを統合した最初期のシナリオであり、他を追随させない圧倒的な世界観がここにある。
これをやらずにヴィジュアルノベルは語れない。ぜひやってみよう。
(ただ『鬼畜王』はランスシリーズの作品なので、ランス1~4.2までのキャラクターが登場する。そちらもアーカイブスにあるのでぜひやってみよう。)
“Everlasting Summer”
最後に紹介するのはロシア発の大作ヴィジュアルノベル。
本作の成り立ちは先ほどの”Katawa”と似ていて、ロシアのふたばちゃんねるである「ドヴァッチャン」をルーツとした、Sovietgameというブランドから始まった。
そのためヒロインたちはインターネットミームを元ネタにしているらしい。(日本で言うとノマネコややる夫のようなキャラクター)
本作は残念ながら日本語バージョンはない。ただスマホアプリとしてダウンロードできるので、英語が少しでもできるひとはぜひプレイして欲しい。
英語の勉強にもなるのでおすすめだ。(思ったよりも読めるよ。)
内容はしがない半ひきこもりの主人公セミョーンが久しぶりに町に出てバスに乗ったところ、80年代のピオネール(ソビエトのボーイスカウト)のキャンプに迷いこむというもの。
そこでソビエト人の美少女と触れ合いながら、現代へ帰ることを模索する。
(ご覧の通りCGのクオリティは低いです。ただそれを差し引いても、上回るシナリオがあります。なんとGoogleplayでは100万以上ダウンロードされてるんですよコレ。)
主人公の独白はロシア文学のように鬱屈としていて、非常に哲学的だ。
そしてヒロインたちもドストエフスキーに出てくるような激情を持て余していたりして気が抜けない。ヒロイン同士で殴り合いのけんかをしたりするのはやはりロシア産ならではである。
(全体的な雰囲気としては『CROSS†CHANNEL』に似ている。海外のヴィジュアルノベルでは最も00年代のオタク文化の雰囲気に近い作品だ。)
本作の楽しみ方はやはりソビエト時代の生活や夢をノスタルジックに鑑賞するというものだろう。本作をやればソビエトの少年たちがどんな風に生活し、どんなものに憧れていたのかがわかるはずだ。
(ウリヤナちゃん。元ネタはソ連ちゃんというミーム。彼女の名前はレーニンにちなんでいるとか。)
印象に残っているエピソードとしてヒロインと二人でこっそりビデオテープを見るというものがあった。それはハリウッド映画のテープで、もちろん当局には禁止されていたものである。監視社会のなかで持つ憧れ。日本人ではなかなか書けないシナリオである。
(“Everlasting Summer”はMODが非常に充実しています。中でも面白いのはサマンサ・スミスがピオネールのキャンプに来るというもの。サマンサ・スミスとはアメリカ人でソ連との友好をかけ持つ親善大使の少女だったが、謎の飛行機事故で死んだ人物。ただ途中からはロシア語しかないから結末をしらない・・・)
(ちなみに緑色の髪の女の子の名前はミク。おばあちゃんが日本人らしい。・・・なんか見たことのあるかもしれないが、勘違いである。)
とこんな感じでどうだろうか。もちろんほかにもいろいろあるだろうし、ポルノ描写重視であればほかに紹介すべき作品も沢山あるだろう。
(『くろふぁん2Ghz「真・ルセリナ日記」』なんかとかね。現在アニメをやっている『うたわれるもの』もシナリオだけなら無料。スマホアプリで読めます。ただ『うたわれ』はゲームも肝なのではずしました。)
今回はシナリオやゲームシステムの出来が良いものを厳選して選んでみた。
このような低いハードルからヴィジュアルノベル、アダルトゲームに触れてくれると嬉しい。
なぜヴィジュアルノベルなのか
私も昔はアダルトゲームやエロゲー、ギャルゲーと言うとただのポルノだろうと思い込んでいて、かなり偏見の目で見ていた所がある。
しかしこうした無料の作品を入口として実際にアダルトゲームに触れてみると、あまりのシナリオの出来に舌を巻くことになった。
あらゆるエンターテインメントのメディアでも最も凝ったシナリオをやるジャンルは間違いなくアダルトゲームであると断言してもいいくらいだ。
なぜここまで上質な作品が多いのか。規制が少ないから、自由度が高いから、少人数で制作するからなどいろいろな意見があるだろうが、私は尺が長いのにも関わらず売り切りであるというところにあると考えている。
アダルトゲームはフルプライスであれば大体小説6~10冊分以上の量である。そしてこれほどの量を完結した形で提供できるメディアはほとんどない。
例えば漫画や小説。それらは長く続くこともあるが、一冊ごとの売り上げで続くかどうかが決まるので、展開に制限がかかる。あまり出し惜しみしていると打ち切られてしまうからだ。
連載型の作品は常に面白さが求められ、また前半部分から作成しなければならないので、つじつま合わせが難しいというデメリットもある。
そして長さ的にはヴィジュアルノベルに比肩し、なおかつ終わりが決まっているのはドラマシリーズであるが、大きな事業になるため実験的な手法や、よい意味だったとしても奇をてらったやり方は難しい。
そしてドラマもやはり視聴率や継続率を気にしなければならないので展開に制限がかかるだろう。
しかしアダルトゲーム、ヴィジュアルノベルは違う。
普通のゲームよりもシナリオ重視ながら、ゲーム内での区切りは緩やかであり、プレイヤーは自由なところで区切ることができる。
そして最初から完結したものが原則として手元にあるので最後までプレイしてから作品を評価する文化が根付いている。
このようなプレイスタイルがアダルトゲーム、ヴィジュアルノベルのシナリオを凝ったものにする土壌となったのではないかと私は考えている。
(また分岐するマルチエンディングのシステムもシナリオを凝ったものにする要因になってるでしょう。)
面白いシナリオを体験したいのならぜひこの世界に入ってるべきだ。
映画やドラマ、小説、漫画など様々なジャンルに触れ愛して来た人ほど、ヴィジュアルノベルは新鮮でそして魅力的なジャンルであるということが理解できるだろう。
一人でも多くのひとがヴィジュアルノベルに触れることを祈って。
それでは。