Z世代の代表 作品紹介

一号とRYANAがZ世代ならではの視点でさまざまな作品を紹介します。

『手軽に読める西洋古典文学!これで君も文学教養人だ!カフカ、チェーホフ、イプセンなど(2)』

 

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(↑西洋哲学編)

 

リベラルアーツ

① 職業に直接関係のない学問、芸術のこと。実用的な目的から離れた純粋な教養。

※詩辨(1891)〈内田魯庵〉「吾人能く之を解すると怠るとに由りて或は心芸(リベラル、アーツ)ともなり或は器械術(メカニカル、トレード)ともなる」

② 専門に分かれる前の一般教養。大学の教養課程

 

皆さんごきげんよう

読書していますか?

明日は立秋

つまりあしたから秋。読書の秋です。

 

「あかあかと日はつれなくも秋の風」 (芭蕉)

(現代でもこの時期に秋の風を感じられるのかな?)

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(言ってることが矛盾している・・・)

 

私は小説についてはどんなものでも読みます。それこそノクターンノベルズから、ライトノベル、SF、大衆文学、前衛文学、古典文学全部読みます。

ライトノベルであっても、芸術的な価値のある作品があると思っている人間ですが、社会に通じる「教養」ということであればどうしても古典作品になってしまいますよね。

 

 

ただ古典と言っても数が多すぎます。

西洋ならホメロスアイスキュロスソフォクレスなどのギリシア時代のもの、ウェルギリウスなどのローマ時代、イタリアはダンテ、スペインならセルバンテスから・・・イギリスならシェイクスピアにミルトンに・・・

 

(豆知識・ダンテの『神曲』って原題は「喜劇」なんですよ。だけど森鷗外が『神曲』って訳してそれが日本語に定着したんです。)

 

多すぎる!!

じゃあだれか偉い人が選んだリストから読んでみよう!

 

サマセット・モームの『世界の十大小説』

 

 

トム・ジョーンズ』『高慢と偏見』『赤と黒』『ゴリオ爺さん』『デイビット・コパフィールド』『ボヴァ―リー夫人』『白鯨』『嵐が丘』『カラマーゾフの兄弟』『戦争と平和

 

なるほどこれを読めばいいのか。

それじゃ『カラマーゾフの兄弟』から・・・文庫で3冊!!!しかも一冊500P。字が小さい!!!

 

 

戦争と平和

 

 

全6巻!!!!!

このほかも一冊じゃ終わらないものばっかり。

長い!それじゃあ別のラインナップを。

 

『二十世紀の十大小説』篠田一士

失われた時を求めて』『伝奇集』『城』『子夜』『U.S.A』『アブサロム、アブサロム!』『百年の孤独』『ユリシーズ』『特性のない男』『夜明け前』

ふんふんなるほど。

 

それじゃあ聞いたことある『ユリシーズ』・・・4巻・・・

 

 

『特性のない男』6巻・・・

 

(3巻までよんだ。つづきは読む気ないけど、わたしの中のベスト10に入る傑作)

失われた時を求めて』13冊・ギネス記録保持者

 

 

まあボルヘスの『伝奇集』は短いけど、他は常軌を逸した長さ。しかも20世紀文学はめちゃくちゃ読みづらいという。

 

(積んでんだよね。)

 

さて、圧倒的な分量の前に挫折しそうな皆さんに朗報です。文学は別に長いものばかりではないのです。短編でも優れた切れ味を持つ作品は沢山あります。

前置きが長くなりましたが、というわけで今回は手軽に読める文学作品を紹介していきたいと思います。

 

 

オイディプス王』 ソポォクレス

 

 

文学と言っても小説だけではありません。そもそも小説というものが成立したのはずいぶん最近のことで、西洋では戯曲と詩が中心だったのです。

そして戯曲の中でも最も古典として完成度の高い作品がこの『オイディプス王』でしょう。

ニーチェが激賞して、フロイトがエディプスコンプレックスの元ネタとした本作。

父殺し、近親相姦という文学の中でも重要なエッセンスが詰まっています。

 

 

ただギリシャ悲劇慣れしていない人だと、コロス(コーラス)などに戸惑うかもしれません。読んでみて困惑した方はこちらの本もおすすめです。

 

 

『砂男』 ホフマン

 

 

くるみ割り人形』で有名なホフマンですが、フロイトの論文で有名なように、彼は「不気味なもの」を書く作家です。

「砂男」とは夜眠らない子どもに親が聞かせるお話に登場する、夜やってきて目を潰す怪人。主人公のナタナエルは子供のころからそのお話を聞かされて、砂男が実在すると信じ込むようになります。

そして父親の弁護士であるコッペリウス、そして彼に似ているコッポラを砂男その物だと信じて疑わない主人公。恋人や友人に「なに言ってんだこいつ?」って思われるところから始まる本作は電波系だとか認識が狂ってしまう系統の作品で最も重要な古典です。

 

 

また狂った主人公が自動人形に恋をするなど、現在の文化への影響も計り知れない本作。

短いのでぜひ読んでみよう。

 

スペードの女王』 プーシキン

 

 

プーシキンはロシアの国民的作家。ロシア語の祖であり、ロシア国内ではドストエフスキートルストイよりもプーシキンのほうがポピュラーなのです。

『オネーギン』が主著というほど有名なのですが、あれは原語では独特な韻文であり翻訳ではその良さを十全に味わい尽くすことはできないと言われています。

ということで散文作品から『スペードの女王』をオススメしておきます。

内容は先ほどのホフマンと少し似ていて、不気味な雰囲気。

題名の通りトランプ賭けについてのお話。異常な精神と伝奇的な怪しさを味わいたいひとは必読の作品です。

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青空文庫でも読める。)

 

『外套』ゴーゴリ

 

短編小説なのですぐ読めます。

このゴーゴリを読んだ日本文学ファンの人は「なんか既視感がある」と思うかもしれないです。それもそのはず。芥川龍之介ゴーゴリをパク・・・リスペクトして多くの作品を書いているからです。

(芥川は今だったらぶち叩かれるレベルで引用していますね。「一本の玉葱」にしろ「鼻」にしろ現在のインターネット大衆は許さないでしょう。私はすべての作品は引用のモザイクである論者なのでパクりで怒ったりはしませんが。)

 

 

芥川龍之介のことはおいておくとして、『外套』について。

平たく言えばさえない男が、外套を変えることで気持ちの持ちようが変化するというお話です。貧しく悲惨な人生を送っている主人公なのですが、すこし突き放した地の文も相まって、本当に可愛そうになってしまいます。

外套を変えることで人生が変わったように浮かれるというのも面白いです。でも外套がなくなってしまったら...

大金を支払いブランド品を身に着けるひともいますが、やはりブランド品を身に着けると気の持ちようも変わるものなのでしょう。

ちなみに作者のゴーゴリウクライナ系。しかしペテルブルグを舞台にした作品も多く、ロシアとウクライナの間でゴーゴリはどちらのものかという争いが続いています。

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『紅い花』 ガルシン

 

(これじゃない)

 

(こっち)

 

なんだか狂気に照準が合いすぎている気がしますが、また精神病についての短編。

『紅い花』の舞台は精神病院。そして主人公は狂人であります。

主人公は罌粟の「紅い花」に世界の悪がすべて詰まっていると思い込み、正義感から花を摘み取ります。

「あの燃えるような紅い花に、世界のありとある悪が聚あつまっていたのだ。彼は罌粟けしからは阿片あへんの採れることを知っていた。恐らくはこの想念が枝葉をひろげ、異様な形をとって、凄すさまじい怪奇な幻影を彼に作り上げさせたのであろう。彼の眼にはその花は、ありとある悪の凝って成ったものと映じた。その花は、罪なくして流された人類の血を一滴もあまさず吸いとり(だからこそあんなに真紅なのである)、人類のあらゆる涙、あらゆる胆汁をも吸いとったのだ。それは神秘な怖るべき存在であり、神の反対者であり、さも内気そうな無邪気そうな風ふりを装う暗黒神アリマンであった。毟り取って、殺してしまわねばならないのだ。しかもそれだけではまだ足りない。それが息を引きとる際に、身内の凡すべての悪を世界へ吐きだすようなことがあってはならないのだ。だからこそ彼は、それを自分の懐ふところにじっと押し匿していたのである。」(ガルシン著 神西清訳 『紅い花』 青空文庫より)

どんどん病状が悪化していく主人公。それでもかれは「紅い花」にある悪を滅ぼさんとします。

あんまり有名な作家ではないですが、太宰治が熱中していたり知る人ぞ知る名作家であるガルシン。短いので読んでみましょう。

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『可愛い女』 チェーホフ

 

 

ロシア文学が続いてすみません。

でもやっぱりロシア文学好きなんですよ。そしてわたしが一番好きな作家がチェーホフ。戯曲が有名ですが、短編の名手でもあります。

そして『可愛い女』も名作短編の一つ。

本作に登場する「可愛い女」であるオーレンカ。彼女はクーキンという男と結婚していますが、夫であるクーキンと同じような話し方をするようになります。

「けどねえ、見物衆にそれが分かっているでしょうか?」と彼女は言うのだった。「あの連中の求めるのは小屋掛けの見世物なんですわ! 昨日わたくしどもで『裏返しのファウスト』を出しましたら、どのボックスもほとんどがらあきでしたが、それがもしわたしたちヴァーニチカと二人で何か俗悪なものを出したとしたら、さだめし小屋は大入り満員だったに相違ないんですわ。明日はヴァーニチカと二人で『地獄のオルフェウス』を出しますの。いらしてちょうだいね」

「というふうに、芝居や役者についてクーキンの吐いた意見を、彼女もそのまま受け売りするのだった。やはり良人と同様彼女も見物が芸術に対して冷淡だ、無学だといって軽蔑していたし、舞台稽古にくちばしを出す、役者のせりふまわしを直してやる、楽師れんの行状を取り締まるといった調子で、土地の新聞にうちの芝居の悪口が出たりしようものなら、彼女は涙をぽろぽろこぼして、その挙句あげくに新聞社へ掛け合いに行くのだった。」(チェーホフ著 神西清訳 『可愛い女』 青空文庫より)

しかしクーキンはなくなってしまいます。

しばらくの間絶望する彼女でしたが、今度は材木屋と再婚します。そして今度は材木屋と同じように話すようになるのです。

 

「「当節じゃ材木が年々二割がたも値あがりになっておりましてねえ」と彼女はお得意や知合いの誰彼に話すのだった。「何せあなた、以前わたくしどもでは土地の材木を商あきなっておりましたのですけれど、それが当節じゃヴァーシチカが毎とし材木の買い出しにモギリョフ県まで参らなければなりませんの。その運賃がまた大変でしてねえ!」そう言って彼女は、ぞっとするように両手で頬をおさえて見せるのだった。「その運賃がねえ!」

 彼女は自分がもうずっとずっと前から材木屋をしているような気がし、この世の中で一ばん大切で必要なものは材木のように思えて、桁材だの、丸太だの、板割だの、薄板だの、小割だの、木舞こまいだの、台木だの、背板だの……といった言葉の中に、何となく親身なしみじみした響きが聞きとれるのだった。」(同上)

このように男を愛するたび、すべてがその男に影響されるオーレンカですが、それを「可愛い女」としたのはどういうことなのでしょうか。

これをチェーホフの皮肉と取ることもできるでしょうし、医者であるチェーホフが診断した男たちの理想の女性の自然な姿という風にもとれるでしょう。

しかし「可愛い女」であるオーレンカのことをなんだか憎めないことは確かであり、短いですが、様々な観点から見ることができる名作だと思います。

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『人形の家』 イプセン

 

島村抱月訳)

しまむらのはちょっと読みにくいのでこれも)

 

こちらは戯曲です。女性解放物として、自然主義として有名な本作。

内容は良妻賢母として裕福な家庭に暮らしていた女性が、ある事件をきっかけに家を出ていくというもの。

外に出るという『人形の家』的なストーリーは数多くの作品に影響を与えていますね。

 

(『ウテナ』は間違いなくそう。)

 

私が好きなのはこのシーン。

「ノラ 私自身に對する義務ですよ。

ヘルマー 何よりか第一に、お前は妻であり母である。

ノラ そんなことはもう信じません。何よりも第一に私は人間です。丁度あなたと同じ人間です――少くともこれから、さうならうとしてゐるところです。無論、世間の人は大抵あなたに同意するでせう。書物の中にもさう書いてあるでせう。けれどもこれからもう、私は大抵の人のいふことや書物の中にあることで滿足してはゐられません。自分で何でも考へ究めて明らかにしておかなくちやなりません。」

「ノラ えゝ、わかつてゐません。これから一生懸命わからうと思ひます。社會と私と――どちらが正しいか決めなくてはなりませんから。」(イプセン著 島村抱月訳 「人形の家」青空文庫

 

(このしまむらじゃないよ)

私は社会学的な価値はおいておいて、よくわからないけれどとりあえずこの場から去りたい、これから一生懸命わかるんだという姿勢に心打たれました。

またノラという名前もいいですよね。

 

 

カフカ短編集』 カフカ

 

 

『変身』で有名なカフカですが、彼はショートショートも数多く書いています。そして本当に短いものだと2pくらいしかないものもあります。

これは読みやすい!!だって750分の1カラマーゾフですから。

カフカの短編の中でおすすめは「家長の心配」という作品。

「オドラデク」というよくわからない生き物?についてのお話。

姿は平たい星型の糸巻きで、糸が巻き付いている。・・・

この時点でよくわからないですが、オドラデク自身も名前しかわからないらしいです。

世界でも有数のよくわからない作品を書くカフカ

現在でも通説なるものは存在せず、研究者泣かせの作家ですが、最も数多くの人に愛され続けている作家でもあります。

私はカフカにはきっと、我々が見える世界よりもラジカルな世界そのものが見えていたのではないかななんて思っていたりします。

 

「それがこれからどうなることだろう、と私は自分にたずねてみるのだが、なんの回答も出てはこない。いったい、死ぬことがあるのだろうか。死ぬものはみな、あらかじめ一種の目的、一種の活動というものをもっていたからこそ、それで身をすりへらして死んでいくのだ。このことはオドラデクにはあてはまらない。それならいつか、たとえば私の子供たちや子孫たちの前に、より糸をうしろにひきずりながら階段からころげ落ちていくようなことになるのだろうか。それはだれにだって害は及ぼさないようだ。だが、私が死んでもそれが生き残るだろうと考えただけで、私の胸はほとんど痛むくらいだ。」(カフカ著 原田義人訳 『家長の心配』 青空文庫

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とりあえずこんな感じでどうでしょうか。短くて手軽に読める作品をいくつかピックアップしてみましたが、どれも人類史上の宝ともいえるほど洗練された作品です。

文学のいいところは、我々の想像力をかきたてるところ。そして思っても見なかった世界の視方を提供してくれます。

青空文庫でも結構な量の小説を読むことができるので、ぜひ読んでみましょう。

Kindleのアプリからもダウンロードできるので、結構快適に読めますよ。

 

それではこれで西洋文学編終わりです。

 

あれまだ続くの?と思ったそこのあなた。

 

いつ出すか未定ですが、詩や日本文学、東洋思想についてもいつか出したいと思います。

 

 

 

西洋文化ばかりじゃ偏っているとは思うのですが、私あんまり日本文学わからないので、勉強して出直してきます。

教養人には学ぶ姿勢が大切ですからね。

というわけでまたお会いしましょう。

 

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それでは~