百合初心者による、百合初心者のための、百合ガイド
みなさんごきげんよう。
今回はなんとなくそんな気分ですから、百合こころもとない方向けの記事を執筆したいと思いますわ。
(山手言葉はリアルじゃほとんど絶滅していますね。ネイティブじゃないのでこんな素敵なツールで自動翻訳しましたわ。)
https://www2.kokugakuin.ac.jp/nihongo/ojyo.html
というわけで普通に戻りましょう。今回は百合の記事なので『トップガン』と同じ雰囲気では紹介できないと思ったのでこんな出だし。
さてさて、百合初心者である私がおすすめの百合作品を紹介していきましょうか。
百合と呼ばれる作品紹介
では早速紹介します。ジャンルごとで紹介します。
- GL(ガールズラブ)(本格派だとか。これこそが本来の意味であるとか。)
まず誰もが認める純愛系の百合作品。
「人を好きになることがない少女と、自分自身が嫌いなために他人の好意を受け入れられない少女の物語。」
やっぱりこれですね。百合と言えばおそらくこの作品を推すひとが一番多いのでしょう。絵も可愛いですし、恋愛ものとしてだけでなく青春ものとしても古今東西の作品の中でも最も素晴らしい作品の一つなのではないでしょうか。
恋愛不信、自己嫌悪、自己実現。青少年のリアルな悩みが巧みな心理描写で描かれていて、読んでいてかなり共感してしまいます。(日本だけでなく海外評価も高い)
個人的な見解を言わせてもらうと、この作品はズバリ恋愛漫画への宣戦布告ですね。一巻の最初のページからラブストーリーやラブソングへの不信が語られますし。
愛を感じられない少女二人はどのようにして、愛を取り戻していくのか。結末はぜひ自分の目で確かめてみてください。
「本当に王道、これ一本でGLの大体の流れがわかる!」
王道です。迷いがないほど王道。最初の一冊はこれを。
この五巻にすべてが詰まっていると言っても過言ではないです。女の子が女の子を好きになることによる葛藤、すれ違い、そしてその後、すべてがバランスよく収まっています。ストーリーはおとなしめの女の子が、ギャル系の女の子に声をかけられて、一緒に遊ぶようになって、そして...という内容です。
全5巻と短いですが、侮ることなかれ。
(こっちもいい)
「脱社会的?不適合者二人が送るゆるくてリアルな二人の関係」
ライトノベルです。表向きは器用だけど、薄っぺらな人間関係に息苦しさを感じているしまむらと、孤空を貫く美少女安達の関係が少しずつ変わっていくというお話。基本的には二人のモノローグ形式で進んでいくお話なのですが、安達かしまむらのどちらかに感情移入できること間違いなし。(安達の自分の中の激情に振り回される様子、冷めていて、でもいろいろと要求が細かいしまむらの面倒くささを楽しむ作品!)
個人的に『あだしま』は大好きな作品でいろいろと魅力も多いのですが、一つ上げるとしたら繊細で微妙な心の揺れ動きを表現するモノローグですね。お気に入りを載せておきます。
「どこまでも共にながれていくほど、強い関係は滅多にない。運命と言う川に長く浸れば、絆もふやけてちぎれていく。」[1]
もちろんこのほかにも沢山名作はあります。『citrus』とか『2DK、Gペン、目覚まし時計。』とか、ほかにもいろいろ。素晴らしい作品は数え切れないですね。
- エス(女学校物の親愛を描くジャンル、ハイソで優雅なお嬢様方の親密な関係)
続いてはエス(シスターのS)。女学校ものです。
「説明不要!女学園を舞台に女子高生同士の親愛を描いた超大ヒット作」
おそらく百合と聞いてこの作品を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。コバルト文庫発のこの作品は少女小説。最初は百合というコンセプトで始まったわけではないそうですが、今では百合作品の金字塔ですね。
内容は聖リディアン女学園の生徒会をメインに様々な学校行事などをこなし、各キャラクターのトラウマなどを解決していくというものですが、この作品の魅力は学院内の独特のルールにあると言ってもいいと思います。
まずスールー制度。先輩と後輩が「姉妹」になる制度のことです。先輩が後輩にロザリオを送ることで関係は成立し、「姉妹」は学園内で特別な関係であるとみなされます。
そして山百合会。リリアン女学園の生徒会で、3年生からその「妹」、「妹」の「妹」で構成されています。そして山百合会役員は薔薇(ロサ)と呼ばれ学園内では尊敬のまなざしで見られるということです。
とまあこんな風にエレガントな作品でありまして、お嬢様の雰囲気を味わいたい。伝統的な女学校物に興味があるという人はぜひ触れてみましょう。
(この巻が一番好き)
「2つの女子高を舞台としたエスと本格派をつなぐ名作」
漫画家の描写力ランキングというものを私の中でつけたら、志村貴子の右に出る人はいない。そう断言できるくらい詩的な表現がてんこ盛りの漫画『青い花』です。
この作品のテーマは『やが君』と同じく、愛とは何か。
思春期の少女たちのコンプレックスやゆがんだ欲望と向き合って、一人一人がそれぞれの道を進んでいく、そんなストーリー。
少しマニアックな話をすると、この作品のサブタイトルは文学作品からつけられているのですが、第一話が『花物語』、最終話が『青い花』なんですね。
『花物語』というのは吉屋信子(1896‐1973)による少女小説でエスと言うジャンルの原典的な作品です。対して『青い花』はノヴァーリス(1772‐1801)による青春小説(ビルドゥングスロマン)で未完ではあるのですが、「青い花」に象徴される真実を青年が追い求めるという話です。
ここからは私の邪推ですが、おそらく志村貴子は『花物語』から『青い花』に至る過程、つまりエス(疑似姉妹、疑似恋愛)から真実の愛に至る過程をこの漫画で描きたかったのではないでしょうか。これについてはまた詳しく記事を上げたいと思っております。
エスは伝統的なジャンルで遡ると『花物語』、つまり大正時代まで遡ることができます。エスの雰囲気が好き、ハイソさ、エレガントさに浸りたいんだって人はぜひエスと呼ばれる作品を深堀していってくださいね。
- ゆるいゆり (コメディ、萌えと百合的なベクトルの融合)
『ゆるゆり』以降急速に拡大した新ジャンルですね。百合姫やきららからも数多く出ていて勢いがあります。
『ゆるゆり』 なもり著
「こんな百合もあり?新時代を築いたゆるいゆり」
言わずと知れた超有名作品ですね。「ごらく部」という何をするのかよくわからない部活を中心に女子校で繰り広げられるコメディ。個性豊かなキャラクターたちが織りなすゆるいギャグ展開はいわゆる「空気系」だとか「きらら系」などに近いでしょう。しかし冷静に見てみると思ったよりも人間関係は複雑で(ひまわりと櫻子以外は基本片思い?)、ゆるいと言ってもしっかり百合でキスシーンがあったりします。
『桜trick』 タチ著
「女の子同士のキスが見たい人におすすめ」
アニメのOPを見てください。キスです。キスが見たいならコレ。余計な言葉はいりません。
3.百合風 (明確に百合と断言できないけれど、百合っぽいと思わせる作品)
明確に恋愛感情のベクトルはないけれど、でも確かに愛のベクトルはある。そんな作品。
『きんいろモザイク』 原結衣著
きらら系でも特に人気な作品の一つ。主人公のおとぼけと切れ味のあるギャグ、そして洗練されたテンポ。漫画、アニメ共に傑作ですが、百合としても楽しむことができる作品です。
幼馴染百合としての陽子と綾の関係もさることながら、やっぱりアリスと忍でしょう。(主人公とヒロイン。日本人とイギリス人ですね)この作品はアリスが忍に会うためにイギリスから留学してくるところから始まります。つまり百合的な親愛?のベクトルがこの作品の根幹と言ってもいいです。
「きらら系は百合じゃないでしょ」と言う人もぜひ見て欲しい作品です。
『ご注文はうさぎですか?』 Koi著
きらら系の中でも最も人気がある作品の一つである「ごちうさ」。独特のテンポ感とファンダムのノリから倦厭されがちですが、かなり画期的なんですよこの作品は。
まずメインキャラクターの関係が非常に微妙なバランスにて成り立っているところですね。5人のメインキャラは年齢も学校もバイト先もバラバラ。一人一人の関係を見ると、友達の幼馴染だったり、友達のバイト先の先輩だったりという関係。5人一緒にいる外的要因がない集団なのです。しかし作者の手腕というかキャラクター描写で5人が一緒にいる説得力が描かれている。そうした雰囲気から百合的な要素を感じとる。ある意味上級者向けかもしれないですね。
4.百合には興味ないけど、なにか別の要素があれば百合作品に触れてみたいよという人へ
百合+○○だとか、○○+百合だとかそういうジャンル。『アナ雪』などもここですね。
『少女革命ウテナ』
監督の幾原邦彦や漫画家のさいとうちほなどの政策集団ビーパパスによるアニメ作品。アヴァンギャルドな映像と難解なシナリオ、メッセージ性の強さなどが高く評価されていて、アニメ史に残る名作として語り継がれる作品といなっております。
基本的にはシンデレラストーリー的な童話を意識した作品ですが、主人公のウテナは女の子でありながら王子様なろうとしているというところに本作の魅力が詰まっています。童話上の女性の3つの役割である魔女、姫、母とは違ったスタイルで描かれるウテナというキャラクター。その中性的な魅力は今見ても色あせません。
『ことのはアムリラート』
『推しのラブより恋のラブ』と同じ(姉妹?)ブランドが送る百合ADV。
本作の最大の特徴はヒロインがエスペラント語を話すということ。
?となる人も多いでしょう。
本作は異世界に飛ばされた少女凛が言葉の通じない少女ルカと信頼関係を築いていくというものなのです。そして主人公である凛は現地の言葉である「ユリアーモ」(エスペラント語)を学びながら関係を深めていくのですが、最初はルカが何を言っているのかさっぱりわかりません。(音声も文章もエスペラント語なのでプレイヤーもわからない。)そしてだんだん言語を理解していくにつれ、意思疎通ができるようになっていくわけですが、なんと本作作中に勉強モードと言うものがあり、凛と一緒にユリアーモを学ぶことができるんです。そしてある程度エスペラント語を習得してから、二週目を行うと二度おいしい。そんなゲームです。
『マレフィセント』
『眠れる森の美女』のヴィランであるマレフィセントを主人公に据え、オーロラ姫とマレフィセントの愛を描く映画。
ネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが、見て絶対に後悔はしないはずです。まさかマレフィセントとオーロラをこんな関係にするとは...
終わりに
「結局百合ってなに?」とか「どこからが百合なんでしょうか?」という人も多いと思いますし、興味はあっても独特の雰囲気にあてられて入りにくいひとも多いはずです。
百合は確かに不明瞭で分かりづらいらいジャンル。
恋愛だけが百合なのか。親愛友愛は百合じゃないのか?では性愛は?
一応参考になりそうなものを挙げておきます。『ユリ熊嵐 公式ガイドブック』において語られた百合漫画家の森島明子氏の定義です。
「「ユリはこうだ」というのも、十人いれば十通りの定義があります。私自身は単純に女性同士の恋や愛を描いて、「それがユリかどうかを判断するのは読者さんだ」とずっと言ってるんですけど、かなりセクシャルなものもあれば、本当に淡いあいまいなものもあります。「夫婦に近いけれど友だち」とか、母子関係や姉妹関係もユリと受け取られるときもあれば、違うときもある。」[2]
百合とは何か。結局十人十色ってことですね。
熟練の百合ソムリエだって、それぞれいうことが違うだろうし、定義論争には争いがつきものなので(SF・・・)今紹介した区分けは個人的な区分けに過ぎないことをここで言っておきましょう。
まだ百合についてあんま知らないけど、興味あるよって人とか、興味はないけど知的好奇心はあるだとか、そんな人がこの記事を読んで作品を見たり読んだりしてくれればうれしいです。そしていずれは・・・めざせユリトピア!!
[1] 入間人間著(2015)『安達としまむら 4』株式会社KADOKAWA