Z世代の代表 作品紹介

一号とRYANAがZ世代ならではの視点でさまざまな作品を紹介します。

FacebookがMetaに変わる時 現実を見失った我々はいかに生きるべきなのか。(1)

 

インターネットの世界を牛耳るGAFAという企業群がある(あった)のはみなさんご存じの通りだろう。世界の時価総額の上位を独占し、最先端の技術をもつ会社たちだ。その中でも世界の新興SNS会社を育つ前に買収しまくり、世界中の個人情報を手に入れたFacebookだが、2021に衝撃のニュースが舞い降りた。なんと社名をMetaとかいうわけわからん名前に変えるというのである。

え?メタって何?あっはいジョジョですねはい。

いやいやそんなことより自己啓発本や怪しいジャーナリストが吹聴して普及させた、せっかくのGAFAというまとまりはどうするのだろうか?

今更Mをつけけたってその立ち位置は埋まっているじゃないか。GMARCHのGみたいにMにはもうマイクロソフトという老舗が定着しているのだ。それならいっそ空位になったFは日本のIT企業代表DMMことFANZAに乗り換えていく方向でいこうか。

 

 

(なんだこの本・・・【未読】)

まあ冗談はここまでにしておこう。

このことが「新たなビジネスチャンスに成りえるのか」だとか「メタバースによって世界はどう変化するのか」だとかがきっと生産的で実践的なみなさんの関心だろう。先行き不透明な未来に対してそれらしいことを説明されれば安心できるし、実際これを金持ちが行えば現実に先んじて株価は上昇して未来の可能性をすこし操ることができる。なんといっても金になる。なるほどどんな時代でも予言者が求められるのも頷ける。

そしてそんな議論をここでする気はまったくないということをここで明言しておくとしよう。金になる議論に興味は・・・ないこともないが不得手なのでしたくない。

ここで私はメタという概念について話したい。そして科学「技術」がいかにして「現実」から乖離してリアリティの世界へと移行するのかそういったところについて関心があるのだ。

我々は「現実」に絶望している。そしてこれは日本と言う国が衰退国であるからだとか、陰気な人間だからとかそういう話ではない。そしてここで扱う科学技術の話は実践の話でなく、人が共感する物語の話である。

 

1.美しき未来 


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(「美しき未来」。80年代。ソビエト連邦で公開された映画『未来からの来訪者』の主題歌。ご存じの通り、公開から10年も経たないうちにソビエトは解体される。なんとも皮肉な曲だ。)

20世紀中盤の話をしようか。私はZ世代の人間であるから、その時代は親も生まれていないような時代である。(例外的にわたしたちの両親は生まれています。しかしそれは統計学的例外なのだから生まれていないということ。それが現代社会なんですね。)

二回の世界大戦で進歩史観の破綻を味わい、ヨーロッパの文化的なエリートからは未来にユートピアを夢想するような幼稚な思想は消え去っている時代。しかし世界的には、科学技術の界隈ではどうだろうか。「ラッセル=アインシュタイン宣言」みたいに核の廃絶を目指した動きがあるにはあるが、時は冷戦、核開発競争の時代である。スプートニク成層圏を飛び出して、その数十年後には月にまで人間は飛び立つ。その進歩の裏には時限爆弾的な人類の破滅を促進するものなのだけれど、科学技術によるユートピアの実現は今より素朴に(こんな世の中なのに、そんなことを信じることができる人は本当に才能がある。ほんとにすごいよ。あっぱれ!)信じられていたに違いない。そうした文化的な背景から生まれるのが英米圏のSFにおける極端さだ。この時代のSFでは破滅OR進歩がよく描かれた。

そして破滅というものも現実感のないユートピア的なものなのであるとの指摘もあり、なんとまあお気楽な時代だ。

宇宙開発競争が盛んにおこなわれていた時代なので、人々の宇宙への想像力は膨らんでいく一方だったようだ。そしていずれは人類が地球を飛び出し、高度な知的生命体に出会い進化するだとか、広大な宇宙で星間戦争が繰り広げられるだとか、星間で亜光速飛行をした結果地球では体感の数十倍時間がたっていたなどという物語が生産される。いわゆるスペオペが科学的に消費された。実現するかもしれないという空気だっただろう。だからこそ2001年には木星に旅立つなどと言う映画が説得力をもつわけだ。

 

 

この時代の科学技術への信頼は厚い。日本では「もはや戦後ではない」と叫ばれた、1957年にはアメリカではある本が出版される。偉大なSF作家ロバート・ハインラインが描く近未来SF『夏への扉』だ。素朴な科学「技術」への信頼溢れる、素晴らしきエンターテインメント作品だ。復讐ものとして痛快なストーリー展開やかわいい猫、メインヒロインが・・・であるようなお気楽さももちろん魅力だけれど、ここで強調したいのは発明品たちである。今となっては大昔である西暦1970年や2000年であるが、当時はそこが未来の世界として描かれ、家事用ロボット「文化女中器」やら、窓ふきロボット「窓拭きウィリィ」が登場する。なんというか愛嬌のある発明品たちで、実用性だけでなくロマンがある。

 

 

ロボットということで、少し別の視点に立ってみようか。最も偉大なSF作家アイザック・アシモフ。ロボット工学三原則はとても有名だが、その原点の作品を知る人は現代では少ないかもしれない。『われはロボット』という作品は…めんどうくさいので詳細は割愛するが、人型のロボットが普及している世界の事件を描くお話だ。そもそもロボットというのはスラブ語系(ロシア語だと働く=[работать(rabotat')]だが、チェコ語はわからん。少数民族の言語を軽視するつもりではないのだが不勉強なのでとりあえずロシア語だ)語源の言葉でカレルチャペックが作った概念だ。「働くこと」を冠したその機械は我々がしなくてはならない仕事を手伝う、もしくは肩代わりしてくれる存在だ。人型ロボットが町を歩きまわり我々と共に仕事する。そんな物語もこの時代に沢山生まれてきた。

 

 

 

 

我々人類の技術と言うものは20世紀中盤までは現実世界のものであり、体感できるものであった。だから進歩も実感的に予測される。数字上のスペックなど見る必要なぞない。乗り物であれば今よりも速く。いずれ車は空を飛ぶだろう。宇宙船は成層圏を超えることができた。月に到達した。旅人はゴールデンレコードを持って太陽系を飛び去った。非常にわかりやすい。

そして身近な我々の社会に現れるはずだった技術は、我々の身近な仕事の肩代わりをしてくれるロボットだ。洗濯器が洗濯板を駆逐したのだから、包丁や雑巾だって機械になるはずである。そして家事やら窓ふきなど現実のこまごまとした仕事を勝手にこなしてくれる。最終的にはそれは人型になって汎用的な仕事をこなすだろう。そしてそれは決して遠い未来ではないはずだ。少なくとも宇宙に人類が飛び立つ前には人型アンドロイドが電気羊の夢を見るくらいには発展するはずだったのだ。

 

だが実際のところはどうだったのだろうか。

有人宇宙飛行では、スペオペどころか宇宙ステーション以上の発展は見られない。小惑星の石を持ち帰ることにすら膨大な予算と時間がかかり各国は非実用的な研究の予算を打ち切る方向だ。(はやぶさは本当に感動した!!天の川銀河ブラックホール撮影成功もものすごい出来事ですよ。)

月は・・・もう50年も行っていない。もはやアポロと言えばイチゴ味のお菓子であり、ポルノグラフィティだ。

人型ロボット、汎用的なロボットも身近な存在になりえなかった。ロボットと言えば限られた動作のみを繰り返す工業用ロボットを指すことも多い。20世紀のロマンを背負ってソフトバンクが打ち出したペッパー君は、結局人型をしているだけのタブレットで我々を失望させるだけだった。(たみーの声はよかったよ)

ルンバは部屋にものが少なければかなり実用的かもしれない。あと個人的には全自動草刈り機みたいなロボットを開発して欲しいものなのだが・・・おそらく無理なのでしょうね・・・

 

 

(これが結局一番使いやすい)

 

こんな具合に現実的に実感できる科学「技術」というものは思ったよりも実現することがなく、非常につまらない方向に未来の技術は進んでいくことになってしまっている。

理論上は可能である技術は数多くあるだろう。そしてそれはロマンあふれるものなのだろう。しかし「現実」がそれを許さない。

この「現実」というものは金銭的な事情などの社会的な要素としての「現実」だけでなく、物理学的な世界の個々の細かな条件という意味での「現実」でもある。スペオペにしても汎用的なロボットにしても、それを実現するために現実世界で複雑なタスクをこなすというのは昔の想像をはるかに超えるほどの計算が必要なことを我々は思い知った。そしてそんな偶然の嵐から逃れて、技術の発展は「現実」からコンピューターの処理能力の発展と共に情報分野へと偏重していくのである。

(未来なきわたしたちが美しき未来の夢を見るという運動がヴェイパーウェイヴで昨今の80sブームなのかもしれない。80年代という最後の夢見る時代の追体験なんですかね。でに私と同世代の同士たちには80年代と90年代の違いがあまりわからないみたいだ。なぜか『セーラームーン』の映像が80年代として扱われていたり・・・まあそんなことはどうでもいい。わたしたちにとって未来は過去にしかないということが重要。YMOの音楽を古臭さを感じながらなぜか未来ぽさを感じてしまう感性はなぜかZ世代にも受け継がれている。やっぱ80年代エモい。みんなマリマリマリーみよう!!)


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